津波で被災した宮城県カキ養殖の復興のための支援
- 平成23年7月吉日
- 日仏海洋学会会長 ユベール・セカルディ
- フランス水産養殖侵攻協会会長 カトリーヌ・マリオジュウルス
- 日仏海洋学会会長 今脇 資郎
- 趣旨:
-
日仏海洋学会は,日本とフランスの海洋学および水産学の研究交流を促進することを目的として,1960年に創設された.
当初,海洋学分野でバチスカーフなどを用いた深海資源開発研究の交流を進めてきたが,1960年代後半から水産学分野で養殖技術研究の交流が活発に行われてきた.
フランスでは,1950年代に養殖分野の主要種であるヨーロッパガキおよびポルトガルガキの生産量が10万トンに達したが,その後,沿岸開発などの環境変化と都市化による排水などが原因で疾病による死亡率が高くなり,生産量が著しく減少し続けた.
そのため,1970年〜1973年の間に,日本の三陸沿岸,特に宮城県から,環境変化に強い日本産のマガキ稚貝1万トンがフランスに移植され,フランスのカキ生産の復興に大きく貢献した.
日本産マガキの新しい環境への優れた適応能力のおかげで,フランスのカキ養殖の生産は再び急速に回復し,1990年代には15万トンに達した.
このため太平洋産マガキを,フランスでは「日本のカキ:Les huitres japonaises」と呼ぶようになった.
日仏海洋学会は,研究者交流等を通じて,フランスのカキ養殖の危機救済に非常に大きな貢献を果たすことができた.
これは,日仏海洋学会の誇りである.
今回,東日本大地震に伴う津波によって宮城県のカキ生産業者が甚大な被害を被ったことに対して,フランスの仏日海洋学会および関係者から,義援金を募り被災した漁業者を支援したいという強い申し出が日仏海洋学会に寄せられた.
このフランス側の意を受けて,カキ養殖業,特にカキ養殖の全ての基となる種ガキ養殖場(松島湾・東松島市・万石浦・気仙沼湾など)の復興に寄与することを趣旨とした義援金を募ることにした.
毎年,宮城県のカキ生産組合では種ガキ採取の時期を検討するために,夏の繁殖期に浮遊幼生の採集と,顕微鏡による個体数と発生過程の確認(種見作業)を行っているが,津波により動物プランクトンネットや顕微鏡を失って,この作業ができない状況にある.
そこで,今回の義援金を基にして,宮城県水産技術総合センターおよび宮城県漁業協同組合にこれらの装置を寄贈し,復興への足がかりとしていただくことにした.
なお,装置の入手に際しては,オリンパスメディカルサイエンス販売(株)および(株)離合社から,震災復興を願った格別のご厚意の申し出があり,ありがたくお受けした.
- 寄贈者:
- 仏日海洋学会
- フランス水産養殖振興協会
- 日仏海洋学会
- の各会員有志一同
- 寄贈先:
- 宮城県水産技術総合センター
- 宮城県漁業協同組合
- 寄贈内容:
- 実体顕微鏡 SZ61-ILST2-C 1式
- 生物顕微鏡 CX21LEDN-21S 1式
- 北原式定量プランクトンネット 2点